歴史として記憶すべき丹那トンネルをめぐる旅。
このトンネル以前は、国府津から山北、御殿場を回って沼津へ通っていた東海道線では、時間がかかるし、坂道のため上れない(貨物を多く積めない)ことから、日本経済にも大きな意義を持ち、始まった大プロジェクト。
しかし、想像を絶する困難な工事となり計画より大幅に遅れ、その上にある丹那盆地の水を枯らし、大事故も起きてしまいました。
今回は、災害ともう一つの大事故に関して、めぐります。
※ここでの記述は小説「闇を裂く道」をもとにしています。諸説ありの部分も多いです。
関東大震災について
1918年に着工した丹那トンネル。もともとは1925年完成予定でした。
しかし、計画からは大きく遅れ、さらに予算も大きくオーバーしていました。
そして1923年9月1日11時58分関東大震災が発生します。
震源地はいまでも諸説あり、相模湾のほぼ中央部、北部、神奈川県秦野市付近、山梨県の河口湖付近などでありますが、どちらにしろ、関東から伊豆にかけての広い範囲で甚大な被害を出しました。
10万5千人が死亡もしくは行方不明、そのほとんどが火災によるものという悲惨なものでした。
関東大震災と鉄道
関東大震災では、鉄道の被害も大きいものだったと記載があります。
機関車、客車など1437両が焼失、414両が破壊。
旅客117名、鉄道員12名が亡くなりました。
もちろん東京、神奈川を通る東海道線・熱海線の被害は甚大でした。
機関車、客車ともほとんどが横倒しとなりました。
このころの東海道線、現在の御殿場線では、御殿場駅が半壊、駿河駅は全壊、鉄橋は落ち、トンネルは崩落。東京沼津間は全滅しました。
復旧ができたのはおよそ2か月後でした。
また、大きな事故が根府川駅でありました。
当時はまだ丹那トンネルが開通していなかったので熱海線といわれていた路線。
小説「闇を裂く道」での記述。
根府川駅に近づいていた東京発真鶴行きの下り第109列車。
機関車がホームに入った瞬間に大地震が発生。
車輪が浮き、海側のがけ下へ転落しました。
40m下方の海岸にたたきつけられ、しかも根府川駅周辺の地崩れが起き、駅の建物と線路も転落し、列車もろとも海に沈みました。
何とか助かったのは旅客30名余と機関手1名。その他111名の方がなくなったと書かれています。
根府川駅の下りホーム。少し広がっている場所はあります。
しかし小田原向きに行くとホームが狭くなり、崖の上に立っているのがわかります。
下に見える道路は崖の外側をはしっています。
ホーム先端からの眺め。かなり高い位置にあるのがわかります。
ちょうど電車がいききします。
海沿いの真鶴道路からの眺め。ちらっと見えるのがちょうど崖から飛び出したカーブのところなので、その上にホームがあると思います。ものすごい崖で、左側はこれまた断崖絶壁で、下は岩場と海です。
ホームを渡る陸橋からの眺め。
実は、根府川には、2番線、3番線、4番線となっていて1番線がありません。
ちょっとわかりづらいですが、左の白い建物の横にある黒い色の石積みが1番線になります。
当時この1番線が海に没したためとのこと。
なので、2番線から右側はその後造成されたところなのでしょうか。
駅舎の横に慰霊碑があります。
花もきれいに咲き、横の池には鯉が泳いでいます。
きれいに整備されていますね。
合掌。
陸橋から熱海側。
これもわかりづらいですが、すぐ近くを流れる白糸川という川でも大きな地雪崩が起き、多くの方がなくなったとのこと。
こちらも真鶴道路から見る白糸川。上に見えるのが東海道線の鉄橋です。
この川の左側には、その土砂崩れでも助かった釈迦如来がありますが、それはまた別の機会に。
やはり大きな地震の前にはなすすべもないですね。
丹那トンネルでは
ちょうど工事をしていた丹那トンネルではどうだったのか。
この大震災では丹那トンネルの被害はなかったようです。
また、宿舎などにも被害はなかったとのこと。
地震の際、地面の中にあるトンネルは意外と安全であるということですね。
しかし、大震災以降さらに丹那盆地の地下水は少なくなった、という事象はあったようです。
逢初山トンネルの崩落
丹那トンネルと同時期に工事をしていた逢初山トンネルでは、トンネルの坑口が崩れ、中に作業員が閉じ込められるという事故が発生しました。
構内には27名がいることがわかり、余震のある中、丹那トンネルの坑夫も含めて必死の救助作業が行われ、60時間後に無事全員が救出されたとのこと。
ちょっと遠くて見ずらいですが、奥に見えるのが逢初山トンネル。
丹那トンネル直前の風景。
丹那トンネルを出たところ。奥に見える階段の先に丹那隧道工事殉職者慰霊碑があります。
次回は、おそらく最終回。
さらに起こった大災害と事故。そして丹那トンネルの完成を巡る旅です。
けっきょく、根府川駅の慰霊碑には説明書きを置いてほしい。