未知の病気との戦い
前回はついに原因である寄生虫「日本住血吸虫」を発見しました。
飲み水か??
次はこの虫がどこから入ってくるかです。
普通に考えれば、飲み水。水の中に虫の卵があって、それが孵化して、というのが自然ですね。
しかし、研究が始まった当初から調査はしているものの、水からは発見されず、また発症する地域がかなり限定されているため、水から感染とするには困難でした。
ふるい言い伝え
この時に、古くからの言い伝えが注目されます。
病気の多い地域では、田んぼの仕事の後に「泥かぶれ」になるひとが多かったそうです。
足や手が赤く腫れるとのこと。
しかし、明治ごろの農民に、水を飲むな、田んぼに入るな、とはできず、恐怖におびえながら仕事をしていたそうです。
やはり口からか?
とはいえ、動物解剖では門脈(肝臓へ入る血管)以外の血管からは発見されないため、皮膚から入るならばもっといろんな場所にいるはずだ、やはり他の寄生虫と同様に口から入るのでは、というのが主流ではありました。
しかし、その後水をそのまま飲むことを禁止し煮沸を守るようにしても、病気は減りませんでした。
牛を使った実験
そこで、牛を使って実験をしました。
場所は同じような病気がでていた広島県のある地区。
他の地域から連れてこられた牛を4パターンに分けて実験しました。
①煮沸したものだけを与え、牛舎から出さない牛
②水に触れないよう完全防備し、毎日田んぼに行き来させ、自由に飲み食べできる牛
③口を多い、煮沸したものだけを与え、田んぼを行き来する牛
④なにもせず、自由に飲み食べし、田んぼにも行き来する牛
研究者は、口から感染派と、皮膚から感染派のどちらもいる状態で、公平にジャッジしました。
そして結果は
結果は何と③の牛はすべて感染、当たり前だが④も感染。
食べ物を食べることができ、体を水に触れさせなかった②は感染しなかったのでした。
こうして皮膚から感染することがはっきりしました。
重ねて、京都大学の教授はその地域の水田で、片方長靴、片方素足で入るという実験を行いました。素足のほうに赤い斑点とかゆみが出て、すぐ引いたものの、1か月後に体調不良となり、便を調べると卵が見つかったとのことです。
なかなかこの結果も信じてもらえなかったのは、皮膚から感染する寄生虫がこの時いなかった(発見されていない)ためでありましたが、度重ねた実験結果から、ついに明確になりました。
防ぎようがない
結果、この虫は皮膚を食い破って体内に入ることがわかりました。
これはかなり大変な問題でした。
口からであれば、水や食べ物を煮沸したり、手を洗う、消毒をするなどである程度予防ができるが、皮膚からだと防ぎようがない、ということになります。
こうなると解決のためにはこの寄生虫を撲滅するしかない、ということになります。
こうなると、この虫がどのように卵から孵化して人間にとりつくのかを解明しないといけなくなるわけで、皮膚感染を発見できたものの、さらに解決には時間がかかることになりました。
けっきょく、一難去ってまた一難。